w/ 005 SM
type: space / objects
function: residence
location: hongo, tokyo
floor: 45m2
collaborator: ort(construction)onderdelinde(fabric)masafumi tsuji(photo)
date: 2024.2
publication: jt2405 p.131, jt2406 p.143, SM(smoke)2024
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March 16, 2024, Saturday, clear sky
2024年3月16日土曜日晴天
I was invited to an open house designed by my friends (w//). The client’s request was to “imagine Donald Judd living in a tenement house in Edo in the year 2024. It is interesting to note that the house is a redesign of an old apartment building that was recently renovated.
友人(w//)が内装設計をした住宅のオープンハウスに呼ばれ本郷へ。クライアントの要望は「2024年において江戸の長屋にドナルド・ジャッドが住んでいたら」であったそう。近年リノベーションされた古いマンションの一室を再設計したものであることも興味深い。
Originally, the ceiling was removed and the walls were painted white. Several shelves made of different materials were added under the beams. The residents spend most of their time sitting on the floor. When you sit down and look up at the ceiling, it feels as if the shelves and the hood are framing the depth of the ceiling, giving the room a strange warmth.
元より天井は剥がされ白く塗装されていた。梁下に異なる素材でつくられたいくつかの形態をもった棚が今回新たに付加された。住人は普段床に座って過ごすらしい。座ってかすかに目線を上げると、棚たちやレンジフードによって天井の懐が縁取られているように感じ、不思議と温かみを感じる。
It was as if these shelves were temporarily attached to the wall and seemed to be about to move. The space between the shelves and the hood, the space between the ceiling and the shelves, and the uneven design may have created this kind of emotion.
それらはまるで一時的に壁に固着しているかのようであり、ふわふわと動き出しそうな気配をもっていた。それぞれ棚やレンジフードの間に隙間が設けられていることや天井との間に空間があること、そして統一されない意匠がそのような情動を引き起こすのだろう。
The center of the floor is cut in the shape of a cross, and only in this area is the flooring material rotated 90 degrees (the idea came from the marks left when the walls were removed for the renovation). This cross is like the fringe of a tatami mat, which gives the feeling that you should not step on it. It is a cross that suddenly brings discipline to this small space. Cardo-Decumanus.
床の中心は十字に切り込まれ、その部分だけが90度回転した床材が嵌め込まれている(リノベーションにあたって壁を取り払った際に生まれた跡から思いついたという)。この十字はさしずめ畳の耳のようなものであり、踏んではいけないような感覚を呼び起こす。それがこのわずかばかりの空間ににわかに規律をもたらしているのだ。カルド−デクマヌス。
I wonder if tatami mats were ever laid in the tenements of Edo.
はたして江戸の長屋に畳は敷かれていたのだろうか。
Text: h***** k*******
文:小南弘季
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Interior design for anime producer’s house.
Space is just one room, inside the apartment, located in the downtown atmosphere.
マンションの内装計画。
アニメプロデューサーの生活空間であり、鑑賞空間であり、社交空間である。
Concrete slab(top) and walls(west/east) are exposed. 2 windows facing south.
WC, bathroom, and laundry are arranged along the common corridor(north).
Existing space is surrounded by these elements.
By adding objects between these existing elements and space, one room would have various modes as living, viewing, and social space.
壁と天井はコンクリートの躯体があらわしになっていて、玄関側に、水回りがまとめられている。キッチンが置かれた主空間にこの3つの要望を詰め込むことが求められた。
そこで、ひとつの空間が、時間によって如何様にも変化する、そんな様相を実現させるために、ワンルームをぐるりと囲むオブジェクトを準備することにした。
Objects are storage for daily goods.
Objects are equipment space for lighting and electricity.
Objects emphasize the square.
オブジェクトは、生活者の私物を収納する。
オブジェクトは、設備スペースとして、壁と天井をクリーンに保つ。
オブジェクトは、空間のなかで正方形を強調する。
Objects don’t rule the activity, but embrace any activities.
Therefore, objects as a square are a bit distorted:
incomplete shelves, shelves with different rhythm, waving shelf and hanging bar.
オブジェクトは使用者の行動を規定しない。
むしろ、オブジェクトは空間に揺らぎを与えるように、少しずつ、歪められている。完結しない棚。リズムの異なる棚。波打つ棚とハンガーバー。
Objects have some by-products:
curtain for hiding households and square white wall.
オブジェクトには空間に揺らぎを与える副産物も含まれる。
水回りやワードローブを隠蔽するカーテン。白く塗られた正方形の鑑賞壁。
Furniture and a cross on the floor are margin for coming space.
床に置かれた什器と十字の痕跡は、空間の補助線として、
余白として残されたオブジェクトである。
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建築レーベルw/ 設計による《w/ 005 SM》(2024)の平面図が、ジャッドとは異なる方法で図面と実空間の経験に差異を生じさせていることは、示唆的だ。
《w/ 005 SM》には、「ワンルームをぐるりと囲むオブジェクト」が天井側に設置され、他方、「空間の補助線として、 余白として残されたオブジェクト」である什器と床のフローリング・パターンが施されている。しかし、《w/ 005 SM》の平面図において、各要素は図面の作法に則らない実線、点線、塗りつぶしの入り乱れにより、非階層的なひとつのレイヤーに統合された。平面図における図と地は、入り乱れ、分かち難いひとつの圧縮体となっている。
《マンサナ・デ・チナティ》にならえば、《w/ 005 SM》における図面と実建築の経験は異なる。図面を先んじて見たときに得た「圧縮」は、実空間を経験した時、上下に引き裂かれるだろう。そこにあるのは、図面とは裏腹なヴォイド、がらんとした、図と地の宙空である。見上げては見下げる、その繰り返し。空間に配置されたオブジェクトたちは、ミニマル・アートを演じているのだろうか? たしかに壁の什器は、ジャッドの壁掛け作品の特徴(マテリアル、構成、比率)を備えている。しかし、圧縮された平面図が示唆するように、そこに埋め込まれたのは、個々のオブジェクトではない。空間を回遊しながら「見る」ことによって生じる、オブジェクト同士の重なり合い、図と地の引き裂かれと再圧縮のイメージである。
文:エヌ氏
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graphic objects: m******* m*****