w/ 024 DJ
type: object / image / text
function: exhibition
location: WATARI-UM, jingumae, tokyo
collaborator: tanuki, ort, sunjunjie.studio, and so on…
date: 2026.2.15 – 6.7
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ワタリウム美術館「ジャッド|マーファ展」の会場構成と、会場テキストの執筆。本展は日本における約四半世紀ぶりのジャッドの個展であり、半世紀ぶりのワタリウム(当時、ギャルリー・ワタリ)でのジャッドの個展になる。

ボッタが設計したワタリウム美術館はシンプルな幾何学形状で構成された平面をもつが、直角二等辺三角形の全体平面に対して、ファサードは向かって左側の階段室を除いた部分でシンメトリーを構成するように窓が配置され、さらに室内でも吹き抜けを介して2・3Fは接続され、4Fの窓から光が注ぐなど、その立体的な構成は複雑である。このシンプルな平面形状とシンメトリーな立面の衝突によってうまれる複雑な空間構成を、ジャッドが空間に対して求めていた「合理的アシンメトリー」という概念を応用し、建築要素・作品同士をできる限り自律したものとして配置することを試みる。
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PV: But in the Block, you have beds all over the place.
DJ: Yes, because in order to live with the art, you have to be relatively comfortable. Also, I like for the rooms that have art to have some sort of function. It doesn’t have to be so great, but if you can sit there and have a drink, or eat, or lie down, or read, then you look at the work. Because you can’t look at the art, I think, as we’re supposed to in museums and galleries,really. You walk in, you look at it, you walk out, and that’s it. I can’t see anything that way.
(Donald Judd Interviews, p.548.)
アートと共に住むには、ある程度快適である必要がある。それに、作品の置いてある部屋には何らかの機能を持たせたい。大げさなものでなくても、そこに座って飲み物を飲んだり、食事をしたり、横になったり、読書をしたりできるなら、自然と作品を見ることになる。というのも、美術館やギャラリーで求められるような鑑賞の仕方——中に入って作品を見て、出て行くだけ——では、私には何も見えてこないからだ。
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会場テキストは13のキーワードについて解説することにした。ジャッドが二次元平面から三次元立体へと移行していったこと、ニューヨークでの活動からマーファ(、それからヨーロッパ)へと移動したこと、素材・展示・家具についての彼の考え方をなるべく平易に解説することに努め、ワタリウムのフロアを上っていくごとに、ジャッドの制作についての理解が深まることを意図している、
2F・3Fの展示物はペインティング・立体作品・家具で構成し、4Fはギャルリー・ワタリとマーファの資料を紹介するコーナーとした。
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Doing good architecture for less money I think is the main idea. (DJI, p.549)
より少ない予算で優れた建築を実現することこそが、核心にある考え方だと思う。
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ジャッド自身がいう通り、建築への興味が二の次であったからこそ実現できた空間の質が、マーファにはある。その再現を東京の中心で再現することは困難だが、最小限の操作で最大限の効果を生み出すように努めたその姿勢は、ジャッドの空間に対する態度と通底しているのかもしれない。

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The one-quarter swiveled at the Chamberlain Building, then one-half of a door swiveled, so that led to the idea of a whole swiveling gate. (DJI, p.551)
チェンバレン・ビルディングでは[十字扉の]4分の1が回転し、その後扉の半分が回転するようになったので、十字扉全体が回転することを思いついたのです。
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01.Artillery Sheds(1979-86) Exterior
大砲格納庫 外観
A building that once served as artillery storage for a military facility has been installed with 100 aluminium works by Judd. In order to stop leaks, Judd added a vaulted roof to the previously flat-roofed space, thereby doubling the building’s height and altering its proportions.
軍事施設の大砲格納庫であった建物にジャッドによる100点のアルミニウム製の作品がインストールされている。雨漏りを止めるため、フラットルーフだった空間にジャッドはヴォールト屋根を架け、建物高さを二倍にし、プロポーションを調整している。
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02.Whyte Building(1990) Exterior
ホワイト・ビルディング 外観
A swivel door has been added to the building, which previously served as a storage barn. This is one of Judd’s methods of introducing architectural changes to existing spaces while keeping intervention to a minimum.
倉庫であった建物に十字扉を加えている。既存の空間に最小限の操作で建築的な変化をもたらすジャッドの手法のひとつ。
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03.Arena(1980-84) Exterior
アリーナ 外観
Originally an aircraft hangar, later used as a gym and indoor riding hall. The cross doors, frequently featured in Judd’s architectural interventions, functions as a gate here by being positioned independently outdoors.
元々は飛行機格納庫、のちにジムや屋内乗馬場としても使用されていた空間。ジャッドの建築的介入によく用いられる十字扉はここで独立して屋外に配置されることで、ゲートとなっている。
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04.Casa Perez(1983-87) Interior
カサ・ペレス 内観
About an hour’s drive from Marfa lies the ranch house, which is located in an area called Ayala de Chinati. The relationship between the exhibition space, the living space and the positioning of the opening is perfect within its most private spaces.
マーファ市内から車で1時間ほど、アヤラ・デ・チナティと呼ばれる地域に建てられていたランチ・ハウス。最もプライベートな空間において、展示空間、生活空間、そして開口部の位置の完璧な関係が達成される。
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05.Whyte Building(1990) Interior
ホワイト・ビルディング 内観
Judd favoured natural light and drew it through the swivel door that he installed. He corresponded the depth and brightness of the space with the light, and determined the layout of the furniture and two-dimensional works in relation to it.
自然光を好んだジャッドは、自身が設けた十字扉から光を取り込み、空間の奥行きと明るさを対応させ、家具と平面作品のレイアウトを光との関係で決定している。
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06.Arena(1980-84) Interior
アリーナ 内観
Some existing openings have been left as they are, some have been filled in while retaining a recess, and some have been filled in without leaving a recess. Judd’s thoughtful approach to openings is evident here.
既存の開口部はあるところはそのまま利用され、あるところは窪みを残しながら埋められており、またあるところは窪みを残さず埋められている。ジャッドの開口部に対する思慮深い判断がここでは観察できる。
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7.La Mansana de Chinati / the Block(1973-1994) West building Interior
マンサナ・デ・チナティ(ブロック) ウェスト・ビルディング 内観
Originally an aircraft hangar, later used as a warehouse. A unique feature is the placement of a bed alongside Judd’s work. It’s a fusion of exhibition and living spaces.
元々は飛行機格納庫、のちに倉庫としても使用されていた空間。ジャッドの作品とともにベッドが配置されている点がユニークである。展示空間と生活空間の融合。
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8.La Mansana de Chinati / the Block(1973-1994) West building Interior
マンサナ・デ・チナティ(ブロック) ウェスト・ビルディング 内観
The position of the entrance door has been adjusted to accommodate the permanent installation. This is one example of Judd’s emphasis on sequence in his renovation.
パーマネントインスタレーションに合わせてエントランスのドアの位置が修正されている。シークエンスを重要視するジャッドのリノベーションの特徴のひとつ。
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09.La Mansana de Chinati / the Block(1973-1994) Winter garden
マンサナ・デ・チナティ(ブロック) ウィンター・ガーデン
Judd repeatedly attempted to create courtyard-like external spaces by enclosing areas. The Winter Garden is situated in a corner of Manzana de Chinati, with a pool at the front of the garden and benches and windows overlooking the outside of the property at the rear.
ジャッドは空間を取り囲み、中庭型の外部空間を作ることを繰り返し試みている。ウィンター・ガーデンはマンサナ・デ・チナティの片隅に位置し、庭園の手前にはプール、奥にはベンチと敷地の外を眺める窓が設けられている。
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10.Chamberlain Building(1080-86) Interior
チェンバレン・ビルティング 内観
John Chamberlain’s work is installed in an area that used to be a fabric warehouse. Judd was interested in how space is divided. Cross doors are also used to divide and connect spaces.
生地倉庫であった空間にジョン・チェンバレンの作品がインストールされている。ジャッドは空間の分割に興味があった。そして空間同士の分割と連結にも、十字扉は使用されている。
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_25.9.11
前日、駆け足でブロード美術館とドジャースタジアムでの観戦を楽しむ。ブロードはリヒテンシュタインがとてもよく観える空間。ドジャースタジアムはアメリカの娯楽の極地だと感じる。どちらもスケールがやはりアメリカンだ。
LAXからエル・パソ空港へフライト。エル・パソから車で3時間かけて、マーファへ向かう。時差がさらに1時間ずれることにより、チナティ財団の二人をとても待たせてしまうことになる。午後5時ごろにマーファに到着。
8年ぶりのマーファ。8年越しのカイトリンとティムは歓待してくれた。急ぎ足でチナティ・ファウンデーション。

Artillery ShedsとThe Arena、それからDan FlavinとJohn Chamberlainの恒久展示を観てまわる。Artillery Shedsは雨漏りがするらしく、これから大規模修繕がはじまるらしい。維持することは大変だ。夕方に観るThe Arenaは光が美しい。それから前回はジャッド研究に専念していたこともあったからか、今回はフレイヴィンのパーマネント・インスタレーションがよく観えた。一級品だと思った。展示が変わらずとも、光と鑑賞者の見方は変わり続ける、そんなことを感じたマーファ1日目だった。
ティムと明後日もまた会うことを約束し、足早に今日は解散。明日のフレイヴィン・ジャッド、レイナー・ジャッドとの会合を控え、少し緊張が走るディナータイムを同伴者と過ごした。
ところでティムのガイドツアーも一級品である。詩人である彼は、マーファで本屋と映画館を運営し(経営に疲れたからそんなにオープンしていないよと彼は言っていたが)、ボランティアとしてチナティのツアーを個人的にしているみたいだが、言葉を大切にしている彼のツアーはこのキャプションが一切ないマーファの空間を味わうときのオーディオ・ガイドとして、非常にはまっている。ジャッドの生前から、この空間にはキャプションはなく、スタッフがガイドツアーをしていたのだろうか。その辺りのモットーについては、もう少し聞いてみてもよかったかもしれない。

アリーナの開口部は一部、塞がれている。長手方向の開口部はわずかなニッチを設けながら塞がれているのに対して、短手方向の開口部はニッチを設けず、スムースに塞がれている。これがジャッドのジェントルなリノベーションなのだと、ティムは言う。
カイトリンは、8年前にマーファに来たときはジャッド財団のスタッフで、私の研究のアシスタントを親切にしてくれたのだが、今回はチナティ財団のディレクターになっていた。ジャッド財団にいたときはファンデーション所有のプロパティーの管理・公開に従事していたけれど、チナティに異動してからはアーティスト・イン・レジデンスなど、外部との交流もあり、やりがいがあるよと言っていた。
_25.9.12
朝からジャッド財団。まずはブロック(マンサナ・デ・チナティ)を見学する。
マーファは今年、ながい旱魃の期間のあとの雨季が訪れているようで、緑が多い。ブロック内部の植物も生い茂っていた。
ウェストビルディングのパーマネント・インスタレーションの合理的アシンメトリーについて、再確認する。ベンチの位置が、合理的アリンメトリーを示唆する重要な位置だったのだ!

ブロック全体を取り囲む外壁は一部、崩落していて、こちらの修繕も今後おこなっていくとのこと。
Art Studioが同伴者には一番響いていた。ジャッドのスタディやサンプルの軌跡。ここの什器などを実測する。普段インストールされていて見えない作品の背面が見える面白さは、ジャッドが壁掛けの作品を意図していながらも、床置きで設置することにした初期の判断にも通じる。
午後、ジャッド財団とフレイヴィンと打合せ。大量のスケッチは見応えがある。ギャラリーワタリとのやりとりの資料も残っており、この辺りの考察もできるといいなと思っている。
_25.9.13
朝9時に集合して、Casa Perezへ向かう。車を飛ばして1時間ほど、舗装もなくなり、乾燥した地形の上をただただ移動していく。
既存の家屋に、最小限の介入。附属の小屋を設置に、水回りをまとめる。ベッドなど、いくつかのジャッドデザインの家具。屋外に3つのパーゴラ。ここまでは写真でも確認していたが、奥に小さな庭があるのは行くまで知らなかった。

ベンチから、庭越しに、小屋を眺める。この視点に立ったとき、ジャッドがベンチを置く位置の視点を感じ、土地を破壊することを忌み嫌ったジャッドの気持ちが少しわかった気がした。
ジャッドは主にここには一人で滞在していたようだ。夜はどんな空気なんだろうか。できれば泊まってみたいと思った。
午後は撮影しにジャッド財団とチナティ財団を再度まわる。
_25.9.14
着た道を逆走するように、マーファからエル・パソ、そしてLAXへ。LACMAでの展示、fictions of displayを観る。マイケルフリードのtheatricalityというジャッドや同時代の作品を批判した用語を再度引用し、演劇的な映像作品とジャッドの作品を併置させて、そのシアトリカリティを浮かび上がらせようとするコーナーがあった。私はフリードの批判はロバート・モリスなどの作品には当てはまる指摘だなと思いつつ、ジャッドの作品にはモノそのものの現前が現れていると思っているので、その批判はどうなんだろうと思っているので、そもそも懐疑的なのだが、映像とジャッドの立体作品の併置は意欲的な展示方法としてまだいいとして、この間に合板でできたベンチを配置していたのは流石にシニカルすぎるだろうと感じた。ユーモアならまだしも、シニカルになってしまうのは、美術館側にモノそのものを見せる気持ちがあまりにもないように感じ、マーファからの帰りであることも相まって、あまり感心できなかった。一方で、LAの美術館のコレクションの大半はコレクターの寄付から成り立っていて、無料で観れる。からこそそんな断片化した作品群から物語をつくるためのキュレーションなんだなとも、同時に思う。
ところで、MOCAの立ち方は大分医師会館のそれと近しいかも?と思ったり。渋い立ち方だなと思った。
_25.9.15
mike kelly foundation, lacma, alan hergott 邸で会食。
michael maltzan さんにsmokeのブックレットをお渡しする。
_25.9.16
hammer museum, regen project, hauser & wirth。
ギャラリーが美術館を超えていた。